伊藤園キャンペーン「お〜いオオタニサン!」の文字を書きました
伊藤園「お〜いお茶」と大谷翔平選手とのグローバルアンバサダー契約を記念して展開された「『お〜いオオタニサン!全世界60紙全面広告」の筆文字を富永が担当いたしました。ロサンゼルスで活躍する大谷選手へのエールをお手紙の形式で日本語版、英語版で書き下ろしました。この広告はSNSや多くのメディアで紹介され、大きな注目を集めました。
『お〜いオオタニサン!』 はどんなキャンペーンだったのか?
先に発表された新聞広告に続き、渋谷ハチ公広場やスクランブルスクエア、六本木ヒルズメトロハット、大阪道頓堀などでは「お〜いオオタニサン!」という掛け声が書かれた大型広告が展開されました。
また、今回のキャンペーンを機に商品ロゴに加えられた「心と身体、ささえてくれる。」の文字を書き下ろしました。横書き、縦書きの両方で使用されることを念頭に、どちらでも可読性が保たれるような文字を目指しました。
縦組だとこのようになります。(下図)
ご依頼内容は「大谷翔平選手に寄り添った手紙にすること。」
最初の新聞広告では、クライント様からは読みやすい文字、親しみのある文字、「大谷翔平選手に寄り添った手紙」というご依頼をいただきました。今回のご依頼に対する進め方をご紹介いたします。
まず第一にコピーを最後まですっきりと読んでいただけるように
時間が限られていたため、まずはプレゼンテーション用に冒頭の数行だけを書き分け、検証します。
新聞広告では、まず第一にコピーを最後まですっきりと読んでいただけるような明快さが必要だと感じました。文字の雰囲気がビジュアルに溶け込めているか、画数の多い字でも細部が潰れていないかなど、基本的なことを踏まえ、風通しの良さ、清涼感が伝わるような文字を心掛けました。
- 案1すっきりした細身の文字。挨拶文らしく、趣のある端正な書。
- 案2案1よりもやや太めで、節々にクセのある楷書。文字を書く速度を抑え、手紙を丁寧にしたためているイメージ。
- 案3ポップな要素を加え、親しみやすさを意識。読みやすさも重視。
- 案4ポップな要素を強調し、個性ある文字に。可読性としてはギリギリの範囲だが、独特のリズムを加味。
決定案。可読性、親しみやすさの両面から、案3の方向で決定。改めて本文を書き、誤字などをチェックし、完成。 今回はtiffとパス化したaiデータで入稿。
次に大型広告では、背景となる茶畑のスケール感に合うような壮大な表現ができるよう、動きのある文字を模索しました。最終的には掠れのある力強い文字でありながら、角の取れた、温かみのある表現に辿り着きました。「オオタニサン!」の文字を逆アーチ状に配置したことで、日本の都市部からはるか遠いロサンゼルスまで本当に文字が届くかのような視覚効果も生みました。
- 案1横長の矩形に対し、メインとなる「オオタニサン!」の文字も横一列に揃えたパターン。新聞広告に比べ、強く、勢いのある文字。
- 案2「お〜い」を左側に配置。文字の溜まりの部分などで個性を演出。
- 案3「お〜い」の呼びかけを、音引きを長くすることで距離感、声量を表現できないか模索。メインの文字にも動きを加味。
決定案
こちらが採用案。動きもありつつ、まとまりがあり、広告のコンセプトと街に展開された時の「登場感」なども合致。「渋谷のカオス感は凄まじいが、オオタニサンだけが目に入る」「大谷さんも見るのかな?」といった狙い通りの反応がSNS上で確認できました。
広告における書には、答えのない、つかみどころのない部分がいくつもあります。例えば「強い」「柔らかい」にもいろいろな可能性があります。ほかにも日々、さまざまな発注を受けます。抽象的なイメージをビジュアル化することが商業書、デザイン書においては肝要です。
月刊ブレーンから取材を受けました。
宣伝会議社が発行する広告・クリエイティブの専門誌「月刊ブレーン」8月号の「スペシャリストナビ Vol.38」に書家として富永が掲載されました。
記事では普段あまり語ることのない「書」への取り組み。どのように広告やパッケージデザインの文字と向き合っているのか。この仕事を選んだ経緯など、インタビューをもとにご紹介いただきました。